《短編》空を泳ぐ魚2
「…何かお前、この前も思ったけど雰囲気違うよな?
二重人格?」
首をかしげながら白石は、俺をまじまじと見つめて。
さすがの俺も、口元が引き攣る。
「…お前、見逃してやるんだから一本くれよ。」
“吸うのかよ”と言いながら白石は、
ポケットに入れていた自分の煙草の箱とライターを取り出した。
「それから、お前への貸しはまだ残ってるからな?」
不敵に笑いながら差し出された一本を抜き取って火をつける俺を、
白石は不貞腐れたような目で見つめてきて。
何やってんだかなぁ、と。
吸い込んだ煙を夜空へと吐き出した。
「嫌!離してッ!!」
「うるさい!!」
瞬間、住宅街に響いた男女の言い争うような声に、
目を見開いたまま白石と顔を見合せて。
「…今の声ってもしかして…」
「―――ッ!」
白石が全てを言い終わるより早く俺は、煙草を投げ捨てて足を踏み出していた。
間違いなくあれは、清水の声だ。
俺が聞き間違えるはずもない。
「えっ、ちょっ!
待てよ、岡部ッ!!」
背中から白石は制止の声を浴びせてきたが、その声は俺にまでは届かなくて。
この住宅街だけに、どこから聞こえてきたのかはわからない。
だけど一目散に向かうのは、あのコンビニで。
心臓が爆発しても、足の筋が切れたとしても。
今はそんなこと、気にしてる余裕さえなくて。
大切なんだ、アイツだけが―――…
二重人格?」
首をかしげながら白石は、俺をまじまじと見つめて。
さすがの俺も、口元が引き攣る。
「…お前、見逃してやるんだから一本くれよ。」
“吸うのかよ”と言いながら白石は、
ポケットに入れていた自分の煙草の箱とライターを取り出した。
「それから、お前への貸しはまだ残ってるからな?」
不敵に笑いながら差し出された一本を抜き取って火をつける俺を、
白石は不貞腐れたような目で見つめてきて。
何やってんだかなぁ、と。
吸い込んだ煙を夜空へと吐き出した。
「嫌!離してッ!!」
「うるさい!!」
瞬間、住宅街に響いた男女の言い争うような声に、
目を見開いたまま白石と顔を見合せて。
「…今の声ってもしかして…」
「―――ッ!」
白石が全てを言い終わるより早く俺は、煙草を投げ捨てて足を踏み出していた。
間違いなくあれは、清水の声だ。
俺が聞き間違えるはずもない。
「えっ、ちょっ!
待てよ、岡部ッ!!」
背中から白石は制止の声を浴びせてきたが、その声は俺にまでは届かなくて。
この住宅街だけに、どこから聞こえてきたのかはわからない。
だけど一目散に向かうのは、あのコンビニで。
心臓が爆発しても、足の筋が切れたとしても。
今はそんなこと、気にしてる余裕さえなくて。
大切なんだ、アイツだけが―――…