《短編》空を泳ぐ魚2
「…そんなことよりさぁ。
明後日の模試の答え教えてよ!」


「…いや、教えてやりたいのはやまやまなんだけど。
俺だってわかんねぇんだよ。」


「…何で?」


瞬間、女王様は更に不機嫌さを増して。


なるべく俺は、なだめるように言葉を掛けた。



「…だって、全国統一模試なんだし、俺が作るわけじゃないだろ?
確かに問題くらいには目を通したけど、持ち出し禁止だからコピーも取れないし。」


“だから俺にもわかんないんだよ”


そう言う俺に清水は、あからさまに頬を膨らませて。



「もぉ良い、馬鹿!」


プイッとそっぽ向いてしまう始末。


この場合、俺が悪いんだろうか。


てゆーか、“馬鹿”ってどうよ。



「…けど、問題の傾向くらいなら言えるしさぁ。」


“なぁ?”と、それでもまだなだめる俺は、

きっと一生コイツには勝てないのだろう。



「そんなの聞いて、あたしに理解出来るわけないでしょ!」



開き直るなよ。



「…そんな怒るなよ。
可愛い顔が台無しだぞ?」


ははっと笑う俺を、清水は鋭い瞳で睨み付けて。



「帰る!」


言葉を吐き捨て清水は、さっさと俺の家から出て行って。


何だかなぁ、と。


ちょっとだけ悲しくなった。


いつまで経っても俺は、彼女の中で“それ以上”にならないらしい。


最近はそれが、結構不満。


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