《短編》空を泳ぐ魚2
「清水!
次、体育だろ?
こんなところで突っ立ってないで、ちゃんと授業受けろよ?」


窓の外を眺めるその後姿に向かい、俺は声を掛けた。


ゆっくりとこちらに向けた清水の顔は、明らかに不機嫌で。



「サボる。」



サボる、って。



「…教師に向かって、そんな堂々と言うもんじゃないぞ?」


一応生徒で溢れる廊下だけに、口元を引き攣らせながら俺は、ははっと笑う。



「…昨日、無理やりバックでヤられてさぁ。
足腰痛いんだよねぇ。」


「―――ッ!」


瞬間、動揺したように視線を泳がせる俺をまるで楽しむように清水は、

不敵に唇の端を上げた。


話を聞いていたのだろう周りの生徒達が、ザワザワとしだして。


こーゆーことを堂々と言うから、“エンコーしてる”なんて言われるんだよ。


てゆーか、少しは俺の気持ちも考えて欲しい。



「…素敵な青春を送ってるんだな、清水は。」


「おかげさまでね。」


嫌味を嫌味で返しやがる。


気を抜くと、作った顔が崩れそうで。


覚えてろよ、と。


心の中で吐き捨てた。



「あっ、清水さん!」


瞬間、割って入ったように清水を呼び止める女の声が廊下に響いて。


俺と清水は、同じようにそちらに顔を向けた。



「…桜井、先生?」


先ほど職員室で別れたはずの桜井先生が、少し息を切らして近づいてくる。


胸の上に抱えている教科書から、授業の前だろうとは推測出来るけど。



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