【短】キミにダイブ
見上げた視線の先、
天に向かって両腕を伸ばし、一本の線となった柏木が跳ねた。
宙に浮いた体は綺麗な弧を描き、イルカみたいに宙返り。
そして今度は、逆さまになって落下していく、しなやかなトビウオ。
トビウオが背中を見せた時、アタシはゴクリと固唾を飲んだ。
シャッターチャンスも忘れ、魅了される。
水面に吸いこまれた体が飛沫を上げ、
その飛沫が、真夏の炭酸水みたいに弾け飛ぶ。
シュワシュワシュワッ
想像してみる。
アイツの素肌の上を踊って消える、泡の音を。