君がいた奇跡
「慣れてるの? 」


結衣に尋ねる。




「よく手袋作ったり、マフラー作ったりしてたから、慣れてるよ」


結衣は帽子を編んだまま、言った。




結衣が編むと、どんどん進み、少しずつ帽子の形になって来た。


講義と講義の合間に編んだり、時間がある時に編んだり、暇な時に編んだり、色々な時間を使って編んでいた。




「頑張ってるじゃん」


休み時間に結衣に声をかけられた。




「うん、やってるよ」



帽子に視線を落としたまま、言う。



「痛っ! 」


また針を指に刺してしまう。



血がすぅっと流れる。
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