君がいた奇跡
「病気になったのが、私で良かったよ。
だって、こんな辛い病気、他の誰かにかかってほしくないから」



代わってやりたいといった俺にハルはそう言った。




優しく、穏やかな表情をしていながらも、真っ直ぐな瞳をしていた。



ハルはとても強かった。



どんな事があっても、折れなかった。




「だから、私で良かったんだよ。
翔が病気になったら、辛い思いをする。
辛くなるのは、私だけで良かったんだよ」




辛い思いは他の人には味わってほしくないと思って、1人で苦しみを背負い込んでいたのだ。




ハルはこんなに頑張っている。



それなのに、どうして神様はハルばかり苦しめるのだろう。




「ハル、逝かないで。
俺をおいていかないで……」



ハルを絶対に失いたくなかった。
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