君がいた奇跡
「どうした?! 」

私の声を聞いた翔が顔を真っ青にして
飛んで来た。

「髪、抜けちゃったの……」

私は呆然として言った。

「気づかなくてごめんな」

翔は低くて優しい声で言った。

「私もごめんね。
急に叫んじゃって。
このくらい、覚悟してたはずなのにな」

「冷静でいられる人の方が少ないよ」

翔が床に散らばった髪を片付けて
くれた。

そして私は泣いた。

こうして私は色々なものを失って
いくのだろうか。

翔は静観していた。

心がズキズキと痛んだ。
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