君がいた奇跡
「キャー!! 」

浴室から、ハルの悲鳴が聞こえた。

驚いて飛び上がり、すぐに浴室へ
駆けて行った。

目に飛び込んで来た光景は信じ難い
ものだった。

ハルの髪が床に散らばっている。

抗がん剤の副作用だろう。

「髪、抜けちゃったんだ……」

ハルの瞳には絶望の色が浮かび、
見た事がない程、悲しげな表情を
していた。

女性の命である髪を失う事はとても
辛い事だ。

「気づかなくてごめんな」

ハルを守れなかった罪悪感で
いっぱいだった。
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