君がいた奇跡
いつしか髪はすべて抜け落ち、眉毛や
まつ毛も随分と薄くなった。

「はあ……」

つい、こぼれるため息。

心がどんよりと曇る。

「私の病気、治るのかなぁ」

ある時、私は翔に言った。

ずっと思っていた事だった。

「大丈夫だよ。
ハルなら治るよ」

翔は爽やかな笑顔で言った。

強く胸を打つはずの言葉が
今日はなんだか悔しい。

何もわかっていないくせに。

「治らないよ」

私はつぶやいた。
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