僕の可愛いシロ [短編]
 頭部を冷やすこと。身体を暖めること。適度に水分補給をすること。解熱剤を飲ませること。……解熱剤? そんなもの、うちにはない。却下だ。
 その後も画面をスクロールしながら、OKと却下を繰り返す。下痢などはしてないか。嘔吐はないか。その度にシロに近付き、慎重に症状を確かめる。

 なにしろ所詮、中学生の僕。こんな時、一体どうすればいいのかなんて事は到底わかるはずがなかった。ましてやペットなど、あの時以来飼ったことなどない。


 もしかしたら死ぬのかな……?

 そんな考えが頭を過ぎり、思わず熱いものが込み上げ涙目になる。
 そんなことあってたまるか! 僕は思いきり頭を振りかぶった。
 とりあえず、出来る事をするんだ。その考えを振り切るように部屋を飛び出した。

 押し入れに入っているありったけの毛布を全て引っ張り出して、シロの小さな体を包んだ。冷凍庫から氷を取り出してスーパーの袋に入れ、シロの頭の下に敷いた。
 しかし、何時間経ってもシロはぐったりしたまま、苦しそうな呼吸を繰り返すばかり。眠っているのか、そうでないのかもわからない。

 シロ……。

 時間が経つのも忘れて、シロからずっと目を離さなかった。シロがいなくなってしまうかもしれない。そう考えただけで全身に鳥肌が立つ。
 もはや、シロが家に来る前の自分がどう生きていたのかさえわからなかった。

 シロ。シロがいなくなったら、僕は……どう、生きればいいの?



[6月5日]

シロ。
どうか、僕を置いていかないで。
神様。シロは僕の大切な宝物なんです。
どうか奪わないで下さい。



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