僕の可愛いシロ [短編]
 シロだ……。やっぱりシロだ!

 僕の目頭が急速に熱くなり始めた。

 イヤだ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


「ちょっとボク、大丈夫?」
 武田さんが心配そうな声を出し、僕の肩を掴む。僕はそれを思いきり振り払い、勢いよく駆け出した。
 その時、ポタポタと雨が降り出し冷たい感触が断続的に僕の頭を刺激した。

 シロが……シロが轢かれたなんてっ。もう、シロに会えないだなんてっ――!

 頭だけではなく徐々に体にまで浸透するように雨が染み渡る。顔もびしょ濡れになり、溢れ出す涙なのか雨粒なのかわからないが、グシャグシャになったその顔を拭うこともせず、ただただどこへ向かうともなく走り続けた。





 シロ……。

 今見た夢を思い出し、涙が込み上げてくる。

「シロ、おいで」
 部屋の隅で大人しく疼くまっているシロに声をかけた。ピクンとシロの体が反応し、僕の胸へと勢いよく飛び込んでくる。
 シロを見ていると、あの時の小さな子猫を思い出す。

 どんなことがあっても、もう二度とシロを離しはしないから……。
 僕はシロをギュッと抱き締めた。



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