僕の可愛いシロ [短編]
 しばらく下らない会話を楽しんでいると、見かけないIDの奴が入室してきた。

<よろよろ(´∀`)>
 可愛らしい顔文字と話し方からして、どうやら女性らしい。チャット慣れしているらしく、彼女はあっという間に僕らの中に溶け込んだ。

 三十分くらい話してただろうか?
 不意に、その女性がバイオリンの話題を出し始めた。

 ……マズイ。しかし、そう思った時には既に遅かった。

<ショウタソもバイオリンスゴイんだぉ(^ω^)○×バイオリンコンクールで優勝したんだぉ(^ω^)>
 いつも僕と話している奴がこんな事を言い出した。
<ぇ?優勝??>
<そぉ(^ω^)ショウタソ天才>

 どう切り替えそうかと考えている間に、どんどん会話が進んでいく。

<ぁたしもその大会出たケド……確か優勝したのは女の子だったょ(´・ω・`)?>

 あぁ……。

<エェェェ丶(丶;゚A゚)>
<……ショウ嘘つき糞ヤロ(・∀・)>
<自作乙乙乙www>
<釣りかよ(゚∀(*゚∀゚)∂>

 まずい。

<いやオレは△×コンクールだったから>

 僕は機転の利かない頭を振り絞り、苦し紛れに打ち込む。



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