僕の可愛いシロ [短編]
 家に辿り着くと、まだ母親の姿はなく僕はホッと胸を撫で下ろした。やはり明日になるのだろう。
 と同時に本来の目的を思い出し、僕は勢いよく階段を駆け上がった。

「シロっ!」
 ハァハァと息を切らせながら勢いよく部屋のドアを開ける。



 ……シロ?

 シロの姿がどこにも見当たらない。

「シロ?」
 机の下やベットの下など、部屋中を隈なく探したがシロを見つけられなかった。

 ……どこだ? どこに行ったんだっ?

 夜中、部屋を飛び出した時に鍵を閉め忘れた事を無性に後悔した。

 僕は家中を探し回った。トイレ、浴室、台所、押し入れ、しかし何処を探してもシロの姿はなかった。
 もしかしたらすでに母親が帰って来ていて、シロをどこかに連れていってしまったのだろうか? そんな想像が頭を駆け巡る。

 もうお母さんの言いなりになんかなるもんか! そう思い慌てて玄関まで戻った時、先ほどは気付かなかったが床に赤い斑点のような物が付いていた。

 ……血?

 僕はそれを指で掬い上げた。
 きっとシロの血だ! よく見るとそれは階段から玄関の入口までポツポツと続いている。――外に行ったんだ!

 そう確信し、慌てて外へと飛び出した。



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