僕の可愛いシロ [短編]
 今だにそういった経験はなかったが、付けた当初は僕の部屋に閉じこめられた母親を想像しては、なんとも楽しい気分になったものだ。

 番号を押し終え、ゆっくりとドアを開ける。

「……なに?」
 なるべく部屋を見せないように、僕は出来るだけ最小限にドアの開閉を抑えて部屋から出ようとした。
 しかし体の半分を部屋から出したその時、物凄い勢いで母親が僕を突き飛ばし、ドアをバンッと思いきり開けた。

「――ちょっっ!」

 あまりに突然の出来事で、僕は不覚にも廊下に尻餅をついてしまった。母親は、そんなことなどお構いなしにズンズンと部屋に入り込む。
 僕も慌てて立ち上がり、母親の後を追って部屋に足を踏み入れる。母親が布団を剥がしたのだろうか、シロの姿がベットの上で露わになっていた。


 シロ……。

 余りに凄い物音で目が覚めたのだろう、シロがキョトンとした表情で慌てた顔の僕を眺めている。












「……誰? …………この女の子――?」

 母親が振り返り顔を歪め苦しそうに振り絞った声で、僕を見た。



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