ドッきゅん!
パシンッと、頭を叩かれた。女子に暴力を振るうとは……こいつ悪魔か?
「もぅっ、痛いなぁ!」
「はぁ? 何ニヤニヤしながら言ってんだよ。ドMか?」
カチンっときたけど、もう教室の前に着いちゃったし、いきなりキャラ崩壊というのも避けたいから、我慢我慢。
「違いますよーだ。ほら、教室着いたよ!」
私は、さっさと自分の席を探して、席についた。
後ろからもイスの音が聞こえたので、よろしくの一言くらいかけようかと思って後ろを振り向くと……そこにはやつがいた。
「って、なんでその席!? 何かの間違いじゃ……!」
「お前町谷、俺宮田。当然だろ」
「もうイヤ~! 高校生活最初からイヤ~!」
「俺も同感だ」
一刻も早く、こいつのそばから離れたい。だけど、私の中学からこの学校を受験したのって、確か私だけだったはず。ということは、知り合いなどいるわけもなく。行くあてもなかったので、私は黙って座っていた。
「お前さ、友達いねぇの?」
「うっ、うるさい! しょうがないでしょ、同じ中学の人いないんだから!」
「ふーん。それは寂しいな」
「う……!」
「……何なら、俺が友達になってやろうか?」
痛いところを突かれて俯いていたら、宮田の口から信じられない言葉が。
友達になってくれるの? 宮田が? 私の?
「……だがしかし断る! あんたの友達なんて恐ろしい! きっと毎晩毎晩あんなことやこんなことをされて……心も身体もボロボロにされるっ……いてっ!」
「俺のイメージどんだけ悪いんだよ」
バシンっと、たぶんほぼ本気の力で頭を叩かれた。さっきより、断然痛い。
「あ~もう本当にイヤ~! 暴力男! 変態エロ眼鏡!」
「てめぇそれ以上言ってみろ? 犯すぞ?」
「おおお、おかっ……!?」
「キャーっ! 翔吾くんが女の子に犯すとか言ってるぅーっ! 怖ーいっ!」
「……へ!?」
いや、今のは私じゃないよ!? 気の抜けた「へ」が、私だよ?
「……大和か」
「やぁ、おはよう! 翔ちゃん!」
にょきっと、窓から誰かが出てきた。ふわふわの、甘い栗色の髪の毛が特徴的な男の子。宮田のことを“翔ちゃん”とか呼べるってことは、相当仲が良いのだろう。
「あ、どうも陸ちゃん! 俺、1-Eの榊大和! よろしくね!」
「よろしく……って、なんで私の名前……!」