点零
インターネットでは
まだまだ同じくらいであろう人に
負けた。
連敗さえした。
そんなことはどうでもよかった。

定石を覚えたり、
詰碁を解いたりもした。

>囲碁って面白いの?

彼女が珍しく部屋に来ていた。

>勉強することが多くていいんだ。

>学校みたいに?

学校―

>私数学とか得意だったな。

>どのくらい?

>三角関数とか得意だったな~

>微分積分とかは?

>あれ難しいよね。

>俺は苦手ではなかったな。

>私も。

この意外なやり取りに、
不思議な縁を感じた。
微分積分まで苦手じゃないとすると、
高校ではできる方だ。

>私、英語の次に点数が取れたのが
数学だったんだ。

>英語どんくらい?

>満点とか。

>へぇ~

キャバ嬢だから
せいぜい高校中退とか
そんな考えだった。
そういえばこの子の事は
そんなに知らない?

>高校どこだったの?

>○○高

>あ、俺、こっちの高校知らねぇや。
卒業した?

>うん、専門行ったよ。

>何の?

>英語の。
通訳とか勉強してた。

>マジか。

>人のことバカにしてたでしょ?

>いや、別に。

>そっちは大学?

>うん。

>私、どうせ中卒くらいに思ってた。

一緒だ。
考えてることまで一緒だ。
確かに、夜の世界だから、
大学や専門が周りにいるとは
お互いそんな考えてないからかも。

>てか、専攻みたいなのは?

>数学教育科

>先生じゃん!

確かにまともに
やってれば先生だったが、
その道は選ばなかった。
俺はもっと深く、難しい数学と
毎日接していたかった。

>先生なれば?

>教職課程を取ってない。

>何それ?
それとらなかったらなれないの?

>うん。

てか、別になろうともしなかったから、
深くは知らなかった。
なってれば、
激務ながら、
安定した生活だっただろう。
金、
金だな。

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