彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。
『ありがとうございましたー』
気のない店員の声を背に、アイスとおにぎりの袋を振る。と、あ?
「よ、耀くん」
「たちっ…橘さん」
うわ、マジか。
目の前には眉を少し下げた橘さんが控えめに笑っていた。う、わ。
「耀くん…今親戚の人ん家じゃないの?大丈夫?あぁ、耀くんも夏風邪だったんだっけ…あれっ」
心底心配しているような彼女にちょっとだけ申し訳なくなる。嘘なのに。
「大丈夫、だから」
「そっ、そう…?ケントくん達もね、心配してたから」
そんなはずないだろ。
また“あの空気”が思い出される。俺は、きっと、嫌われてんだから。
「そんなはずはないよ」
「えっ…」
「俺を心配してるはずがない」
「なんっ」
なんでそう思うの?切実な様子の彼女に俺はさらに続けた。