彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。


「嫌われんのが怖いから、無理に明るくしてる。すっげえ臆病だから、無理して笑うことだってある」


アブラゼミが耳をつんざく。


「今まで必死でつくってきたのに、夏休み前に仮面が剥がれて正体がバレたんだ。誰も、誰もが俺を嫌うだろうよ」


「嫌われんのが怖い、すっげえ怖い。だから俺は…」

「それだけ、みんなが好きなんじゃないの?」


それまで黙っていた彼女が言葉を漏らした。


「嫌われたくないのは、みんなが好きだからじゃない?あたしはその耀くんの本物の姿うんぬんは正直わかんない。でも大切にしたいんじゃないの」

「でも……」

「あたしにはそう聞こえるけどな」


反論したいのに言葉が詰まって出てこない。


「別にいいじゃん、それでも」


話をしたからか、いいじゃんと言われたからか。


胸がすうっと軽くなるのを感じた。


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