彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。


「あのですねー、前から考えてたんだけど橘さんじゃなくていいよー。あたし名前呼びだし」

まあ確かに、俺は名字で橘さんと呼んで。俺は下の名前で呼ばれている。


「じゃ、橘?」

「……梨々でいーよー」


ハードルが高いというか、なんというか。でも自然なのは確かにそうだ。


「お、う」

「うんー!」


太鼓や笛の音が近づいてきた。……そろそろ待ち合わせの時間じゃないかと周りを見た。


そのほんの数メートル先。


「おーっす、耀」

「あ………」


すぐに見つかり、見つけられた。久しぶりに見た、みんなの顔。


「時間きっかりとか耀らしいな」

「みん……な…」


――“怒ってねえの?”

なんでいつも通りなんだ。なんでいつも通り笑って迎えてくれるんだ。


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