彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。


 *


あまりにも自然にいなくなっていたから、気づけたのは金魚すくいをみてからだった。


「うわ霧島ダセエ」

「そういうケントも出目金狙って破いたじゃん」

「耀、しーだって!」


人差し指を口に当てるジェスチャー。こんな小さな内緒、内緒にしてらんない。


金魚…金魚……あっ、


「悪い、ちょい抜けるな」

「おうよー」


今までの俺ならこんなことはしない。でもコイツらなら、大丈夫だと思えたから。


「どした、わたがしか」

「いや違えし」

「わたがしの袋は仮面ライダーファイブスだろ?」

「お前じゃあるまいし」


右手にクレープ。左手にりんごあめ。焼きそばとラムネとかき氷はたいらげ済み……見てるこっちが腹いっぱいだ。


「ええー違うのおー、いいけどさ」


もちろん違うに決まっている。


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