彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。
金魚の浴衣に、アップにした髪。
俺よりも頭いくつか分くらい小さくて。
「お」
出店のある通りから少し外れた小道。ひょこひょこと歩いているのは間違いなく。
あちらは気づいていないらしい。そっと近づき、浴衣の袖をクイッと引っ張る。
「うっ…わ、ビックリした」
「………」
そいえば俺、なんで用事あったんだっけ?
「耀くんじゃん、どしたの」
「ん…」
「みんなといれば良かったのに」
ああ、そうか。
俺
『 ありがとう 』が言いたいんだ。
みんなとまた、ああやっていられるのは、梨々のおかげだから。
「いや、その」
「なにー」
いざとなると、口ごもってしまう。そういや俺、もともと女子としゃべんなかったし…本音は。