彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。
「せっかく、できたんでしょ?これから自然体でいれる場所」
優しい眼差しに、一瞬だけ別人のようだと思った。浴衣の金魚が夏の風でゆらりゆらりと揺らぐ。
ふと、俺はコイツに救われたんだな、と穏やかな気持ちになった。
「……終わったら帰るのか?」
「いや、もう少しフラフラして帰ろうかなー、かき氷食べたいし」
「なら」
一緒でも構わねえよな?と手首を掴んだ。思った以上に細くて、どんくらいの強さでいいのかもわかんない。
手を繋いでるわけじゃないのにどぎまぎする。
「え?えっ」
「ほら、行くぞ」
きっかけもタイミングも、唐突なものだったはず。でも梨々は振り払うこともなく俺に手首を捕まれていた。