運命を変えるため。

 彼女はすぐに見付かった。こちらに背を向け、頻りに携帯で時間を確認しているようだ。
 揺れるポニーテールが懐かしく感じられ、胸が熱くなる。

 気付かれないように背後からそっと近付いていく。
 あんなにも遠く感じた彼女が、手を伸ばせば届く距離に居る。
 今すぐにでも抱き締めたい衝動を抑え、静かに名前を呼んだ。

「……明日香」

 ポニーテールが揺れる。気配で彼女がこちらを振り返ったことがわかる。
 しかし俺たちの間には小さな障害物。

 ……少しキザ過ぎただろうか。
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