運命を変えるため。

 何も言葉を発さぬ彼女に些かの不安を感じ、二人の間の障害物となっていたもの、ピンクを基調とした色合いの小さな花束を横にずらす。

 会いたくて仕方がなかった、愛しい彼女の顔を、漸く視界に捉える。
 その瞳には、今にも溢れ落ちそうなほどに、涙が溜まっていた。

「ごめっ……! 今日付き合って一ヶ月だから、そのっ……!」

 慌てて弁解の言葉を口にする俺。その様子を見て、彼女は笑う。瞳に溜まった涙が揺れる。

「嫌われたかと思った。別れようって、言われるかと……」

 言葉を切った彼女の瞳から、抑えきれなくなった大粒の涙が溢れ落ちた。
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