運命を変えるため。

 ……考えていなかった。焦りが顔に出ていたのか、明日香は快活に笑い出す。

「記念日なのに? 花束まで用意してるのに?」

「面目無い」

 項垂れる俺とは対照的に、明日香はケラケラと笑い続ける。目に涙が溜まる程笑う彼女の様子に、ますます恥ずかしさが募る。
 一頻り笑って満足した彼女は、俺の手を引いて言った。

「じゃあ、私の家に行こっか」

 笑顔でそう言う彼女は、異論は認めないという雰囲気だった。もちろん異論なんて唱えるつもりは毛頭なかったが。
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