運命を変えるため。

「私が居たのは、十年後の未来。中学三年生の時まで戻ってきたから、今からだと正しくは八年後、になるのかな」

 明日香は考えながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。その瞳には、嘘は感じられない。
 八年後、俺が24歳で、明日香は25歳になっている年だろう。

 俺は口を挟まない。明日香の言葉を、最後まで聞くと決めていたから。

「何かきっかけがあったわけじゃないの。気が付いたら、私は中学三年生だった」

 それが示すのは、誰でも人生をやり直せるわけではないと言うこと。明日香は、何かの歯車が噛み合った結果、人生をやり直しているのか。
 その「何か」が何なのかは、恐らく明日香自身もわかっていないのだろうと見受けられる。
< 115 / 139 >

この作品をシェア

pagetop