運命を変えるため。
「あと、明日香でいいよ」
「えと……明日香さん?」
「明日香」
「……明日香」
「よろしい」
半ば強引に、今日始めて出会い、今日から恋人になった彼女の呼び方まで決められてしまった。
しかし、今更そんな強引さに疑問を持つこともなく、俺は言われるがままに新山先輩、もとい明日香の言葉を受け入れていった。
なんとも不思議で急展開を好む彼女は、春だから湧いて出た、普通の人間であれば関わりを持たない、所謂変質者のようなものかと思えた。
そしてそんな彼女を、警戒心の欠片も持たずに受け入れてしまう自分自身も、似たような血が流れているように感じられた、そんな春の始まりの一日だった。