運命を変えるため。

 そんな彼女を見て、ふっと心が温かくなるように感じられ、歩を緩めながらゆっくりと彼女に近付いていく。
 すると、俺が真っ直ぐに見つめていたポニーテールが大きく揺れ、彼女が不意に振り返ったかと思うと、当然目が合った。

 瞬間、ふわっと風の抜けるような優しい笑顔を浮かべる彼女を見て、あぁ、やっぱり、と自分でもよくわからない、しかしとても優しく、どこか懐かしいような感情が心を満たしていった。

 そのまま彼女の横に並ぶと、自然と左手を握られた。

「じゃあ、帰ろうか」

 俺を見上げながら優しくそう言うと、俺達は駅に向かって歩き始めた。
 会話は多くないが、やはり悪い心地は全くしなかった。
< 32 / 139 >

この作品をシェア

pagetop