運命を変えるため。
明日香は手慣れた風にデンモクを操り、早々に一曲目を転送した。ディスプレイに映された曲を見て、再び驚かされることになる。
「この曲……」
「はいっ!」
好きなアーティストだ、と言おうとしたところに被せるように、明日香は笑顔でマイクを手渡してきた。
マイナーなアーティストのマイナーな選曲に疑問を投げ掛ける前に曲が始まり、明日香の期待に満ちた笑顔に圧されるがまま、俺は歌い始めた。
隣で時折口ずさみながらデンモクを触っている明日香を見ながら、俺は昨日から繰り返される彼女の不思議な言動を一つ一つ振り返っていた。