運命を変えるため。

 全員が一曲ずつ歌い終わり、再び佐藤が明るい曲調の恋愛ソングを歌い始めたとき、隣に座っていた赤石がやや小さめの声で話し掛けてきた。

「大葉と話してたんだけどさ……」

 少し聞き取り辛かったが、赤石の神妙そうな顔つきが気になり、そのまま会話の先を促す。

「新山先輩って、小林くんのこと本当に好きで付き合ってるのかな?」

 赤石が何を言わんとしているのか、はっきりと読み取ることは出来なかった。
 しかし、その疑問こそ、俺が今感じているもどかしい感情の原因のような気がした。
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