運命を変えるため。

「ずっと夢だったのよ、主人と二人で喫茶店をするのが」

 チーズケーキを食べながら語り始めた女性の話によると、その夢を叶えられたのはほんの二、三年くらい前の話らしい。それから今春までは、姪御さんがアルバイトとしてお店を手伝っていたそうだ。

「主人は、店長って呼ばれると喜ぶわよ。私はお客さんからは奥さんって呼ばれてる」

 暗にそう呼べば良いと促してくれているようで、呼び方に困っていた俺は少し助かった。
 空になったお皿とカップを手に立ち上がると、再び穏やかな笑顔を残して、奥さんは戻っていった。
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