運命を変えるため。

 茶色のドアを引くと、中から奥さんが出てくる。店に入ってきたのが俺だと気付くと、カウンターの奥に案内された。
 入ったのは事務所のような簡素な部屋だった。

「これに着替えて、そこにあるエプロン着けたら出て来てちょうだい。ロッカーも自由に使ってね」

 奥さんは早口に説明すると、ホールへ戻っていった。モーニングの時間が終わり、ランチまでの暇な時間に仕込みを済ませたいようだ。

 俺も少しでも戦力になれるよう、急いで着替えるとエプロンを着けた。黒いエプロンの右下に遠慮がちに店のロゴが入っている。
 小さく気合いを入れ、事務所を出た。
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