運命を変えるため。
赤石は何かを考えるように深く俯いている。そして、次に顔をあげたときには、先程の涙は跡形もなくなっていた。
顔に眩しいくらいの満面の笑みを浮かべると、いつもの調子で言葉を発する。
「だよね! 言えてすっきりした」
そんな彼女を見て、俺も安堵を覚える。こんなことがあっても、友達の関係を崩さない赤石の様子が、嬉しかった。
しかし次の瞬間、俺の安堵は一瞬にして忘却の彼方へと消えることになる。
ふいに視界いっぱいに赤石の顔が近付き、唇に柔らかいものが押し付けられる。
キスされていることに気付くには、そう時間は掛からなかった。