運命を変えるため。

 俺は反射的に赤石の肩を押して引き剥がす。
 焦って口を動かすが、言葉を発せぬままの俺に変わって、赤石が膨れたように文句を垂れる。

「私、初めてのキスなんだから、少しくらいロマンチックに協力してくれても良いじゃない」

「俺だって……!」

 言いかけて墓穴を掘ったことに気が付き、途中で言葉を止める。しかし、遅かったようで、赤石は嬉しそうな顔を見せた。

「えへへ、良い思い出が出来たよ」

 語尾に音符の付きそうな、弾んだ調子でそう言うと、赤石は先に部屋へと戻っていった。
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