ヘヴィノベル
「あの、あたしの質問、まだ一つ答えてもらってません」
 前島が珍しくきつい口調になって上条さんに詰め寄った。
「どうして園田先生は、あなたたちのあのディスクを届けろと言ったんですか?」
「ああ、それはね」
 上条さんはくすりと笑って、こともなげに俺たちが腰を抜かすような事を答えた。
「その先生、もとは全革連のメンバーだったのよ。私はその人を直接は知らないけど、学生時代はけっこうやり手の活動家だったらしいわ。というより、事実上の全革連の創設メンバーの一人ね」
「そんな馬鹿な!」
 俺と前島は奇しくも同時に同じセリフを叫んだ。前島が続けてまくし立てるように上条さんに言った。
「そんな組織の元メンバーが、どうして教師になれたんですか?」
 上条さんは少し困ったような表情を顔に浮かべた。
「さっき日教連と戦うとは言ったけど、それは君たちが想像しているような意味での戦いではないのよ。本来は、日教連は教師の立場から、私たち全革連は生徒の立場から、学校の環境を良くするためにいろいろ交渉する、そんな関係だったのよ。まあ、何年か前から日教連の先生たちのやり過ぎが多くなってきて、関係がこじれてきてはいるけどね」
「じゃ、じゃあ」
 俺はさっきから聞きたくてしょうがなかった事を思い切って質問してみた。
「上条さんはその、高校生なんですか?」
「あらあ」
 上条さんはこれ見よがしに頬を膨らませた。
「あたし、そんなに老けて見える~?」
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