ヘヴィノベル
 そしてあとは学校の授業風景。いろんな教師が社会科の授業中に教室で、生徒の前で堂々と、共産主義、社会主義を賛美し、中国や北朝鮮がいかに素晴らしい国かを滔々と述べ立て、日本がいかにダメな国かをしつこくまくし立てる、そんな光景の映像が続いた。
 そして最後の方の映像はもっと衝撃的だった。もろに男女の性器の形をした部品がくっついている人形を使って学校で、それも小学校で、性教育と称したセックスの実演が行われていた。
 全ての映像が終わるまで1時間弱。俺と前島はお互い顔面蒼白になって視線を合わせ、何が起きたのか、いや今見た物が何だったのか、理解できないでいた。上条さんが感慨深そうな口調でぽつりと沈黙を破る言葉を発した。
「話には聞いていたけど、映像は初めてね」
 そして上条さんは俺と前島に歩み寄り両方の手で俺と前島の肩をぽんと叩いた。
「君たち、すごいお手柄よ!これは超有力な交渉材料になるわ」
 俺はまだ呆然としていたが、前島はさすがに秀才、頭の切り替えがもう出来たようで機関銃のように上条さんを質問責めにした。
「今のは一体何なんですか?日教連は戦後すぐから、共産主義勢力の悪影響と闘ってきたはずでしょう?それにどうして文学作品が学校の推薦図書なんですか?アニメやマンガが検閲の対象になった事なんてあるんですか?それに反対してデモをやっていた部分は理解できますが」
「君たち、その話誰から聞いた?」
 上条さんは落ち着いた口調で逆に問い返してきた。前島は虚を突かれた様子で小声になって言った。
「それはもちろん、今までずっと学校の先生から……」
 そう言って助けを求めるように俺に視線を向ける。俺もおずおずと言った。
「ええ、俺たち小学校の頃から、先生たちにそう聞かされてきました」
「つまり日教連の組合員から、という事になるわよね。それがもし本当じゃなかったら、あるいは嘘ではなくても歪められて今に伝えられていたら……そう考えた事なかった?」
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