ヘヴィノベル
 そして翌日、足が治った前島と一緒に俺は上条さんの家の別荘にして、全革連本部であるその場所を後にした。次の日には東京都心で落ち合って、いよいよ日教連総本部に突入。そう思うと、帰りに電車の中でも興奮が治まらなかった。
 そして次の日、俺と前島は今回は学校の制服を着て、東京駅で上条さん、竹本さん、風間さんと落ち合った。三人も今日は制服姿だった。上条さんは例の超名門私立の制服。全国女子高生制服ベスト50なんて写真集でいつもトップ3に入っている制服だ。それを着ている上条さんは確かにお嬢様という感じで、つい見とれていたらなぜか前島に思い切り背中をつねられた。
 そこから地下鉄を乗り継いで千代田区の街へ言った。駅から通りを歩いて行くとその建物が見えてきた。8階建の少し古ぼけた、だがけっこう立派そうなビルだ。俺は緊張で少し足が震えた。
 日教連。学校教育現場を支配し、大勢の組合員の教師を自在に操って、世の中の仕組みや常識さえ自由に操作できる巨大組織。上条さんの言葉を借りれば「悪の大魔王の本拠地」だ。
 これがテレビゲームのRPGなら俺と前島は園田先生というプリンセスを救うために悪の大魔王の城に乗り込まんとする勇者と魔法使いって役どころなんだろうが、俺にはそんな度胸はない。
 かんかん照りの暑い日の昼過ぎにも関わらず、俺の背中は冷や汗でじっとりとしていた。段々顔が青ざめてくるのが自分でも分かった。でも上条さんも竹本さんも風間さんも、涼しい顔でそのビルに向かってすたすたと歩いていく。さすが全革連の現役幹部、俺なんかとは肝の据わり方が違う。
 死ぬ思いで入口の自動扉をくぐると、中は意外と普通だった。受付に中年の女の人が座っていてごく普通の会社とかのオフィスに見える。だが、見かけにだまされるな、と俺は自分に言い聞かせた。ここは教育現場を支配する巨大組織の本部なんだ。
 上条さんが受付の女の人に何か言うと、ごっつい大男が俺たちに近づいてきた。まるでゴリラみたいな筋肉のいかつい顔をした男でガードマンか何からしい。俺は膝ががくがく震えそうになるのを必死でこらえた。
 そのガードマンに付き添われて7階までエレベーターで上がる。奥の部屋のドアを大男がノックし、中から細長い眼鏡をかけた年取った女性が顔を出し俺たちに中に入るように言った。全員が中に入るとガードマンの大男が外からドアを閉めた。
< 38 / 50 >

この作品をシェア

pagetop