ヘヴィノベル
そこからまた上条さんが話を引き継いだ。
「学校の先生たちが暴走して、とんでもない事を始めた時に止める人が誰もいないのよ。校長や教頭は見て見ぬフリ、親もPTAも見て見ぬフリ。日教連の総本部も組合の人気が下がるのは困るからびしっと制止できない。どうして止めないのかと言われたら『だって、そんな事をしたら日教連が』と言われる。それを聞いた人たちは日教連というのはそんなに怖い、強い権力を持った組織なのか、と思い込む。暴走している先生たちは先生たちで、誰も本気で止めないから日教連の力はそんなにすごいのか、とこれもまた勘違いする。一度この悪循環が成立してしまうと、もう完全に歯止めが利かなくなるのね。だから今の学校現場を支配している悪の大魔王がいるとしたら、その正体はそういう一人一人の大人たちの事なかれ主義なんじゃないかしら?」
「あるいは空気かもな」
これは風間さんの言葉だった。前島が怪訝そうな表情で問い返す。
「空気ですか?」
「君たちも『おまえ、空気読めよ』ってよく言わないかい?KYって言われたくないから、なんか変だと思っても周りに合わせてしまう。その場の空気ってやつが、姫の言う悪の大魔王の正体と言い換える事もできるんじゃないかな」
「あっ!」
前島が突然大声を出した。そして呆然とした顔つきでまるで独り言のように続けた。
「独裁者がいないファシズム……」
そして俺の方をじっと見る。だけど、俺にはすぐには何の事か分からない。前島はじれったそうに俺に言う。
「ほら、最初にあたしと松陰君と園田先生の3人で保健室で話込んだ時に、そんな事を園田先生が言ってたじゃない。戦時中の日本では、天皇も東条ナントカって人もヒットラーのような独裁者じゃなかった。独裁者がいなかったからこそ、あんなひどい事になったんだって」
「学校の先生たちが暴走して、とんでもない事を始めた時に止める人が誰もいないのよ。校長や教頭は見て見ぬフリ、親もPTAも見て見ぬフリ。日教連の総本部も組合の人気が下がるのは困るからびしっと制止できない。どうして止めないのかと言われたら『だって、そんな事をしたら日教連が』と言われる。それを聞いた人たちは日教連というのはそんなに怖い、強い権力を持った組織なのか、と思い込む。暴走している先生たちは先生たちで、誰も本気で止めないから日教連の力はそんなにすごいのか、とこれもまた勘違いする。一度この悪循環が成立してしまうと、もう完全に歯止めが利かなくなるのね。だから今の学校現場を支配している悪の大魔王がいるとしたら、その正体はそういう一人一人の大人たちの事なかれ主義なんじゃないかしら?」
「あるいは空気かもな」
これは風間さんの言葉だった。前島が怪訝そうな表情で問い返す。
「空気ですか?」
「君たちも『おまえ、空気読めよ』ってよく言わないかい?KYって言われたくないから、なんか変だと思っても周りに合わせてしまう。その場の空気ってやつが、姫の言う悪の大魔王の正体と言い換える事もできるんじゃないかな」
「あっ!」
前島が突然大声を出した。そして呆然とした顔つきでまるで独り言のように続けた。
「独裁者がいないファシズム……」
そして俺の方をじっと見る。だけど、俺にはすぐには何の事か分からない。前島はじれったそうに俺に言う。
「ほら、最初にあたしと松陰君と園田先生の3人で保健室で話込んだ時に、そんな事を園田先生が言ってたじゃない。戦時中の日本では、天皇も東条ナントカって人もヒットラーのような独裁者じゃなかった。独裁者がいなかったからこそ、あんなひどい事になったんだって」