ヘヴィノベル
「え?いや、でも、現に本屋には18禁コーナーがあるでしょ!」
「18禁コーナーというのは元々は大人限定のエッチな本のための物よ。文学作品を18禁にしているのは、あくまで出版社の自主規制という形でしかないの。ライトノベルやコミックやアニメだって、学校教育の教材として使わなければいけないという法律は無いわよ。いつの間にかなんとなくそう決まっただけ」
「そ、そうなんですか?」
 俺には意外を通り越して信じられなかった。だったら社会のルールって、一体何なんだ?学校の先生が「これが正しい」って教えている事に、実は根拠がなかったっていう話になっちまうじゃないか?
「ねえ、松陰君。ファシズムって言葉知ってる?」
 不意に園田先生が聞いた事もない単語を口にしたので、俺は余計混乱させられた。
「ええと、日本一新の会の橋ノ下代表の事でしたっけ?」
「それは『ハシズム』。確かに強引なところのある政治家だけど、あれとファシズムを一緒にしちゃダメよ」
「だったら、分からないですよ」
「日本語に訳せば『全体主義』。つまり一人の人間が、あるいは一つの組織が自分たちのいう事は一から十まで全て正しい、だから全員言うとおりにしろ。そんな感じで政治をやる事ね」
 これには前島の方が早く反応した。
「昔のドイツのヒットラーみたいな物ですか。確か、ナチスとかいう政党」
「さすが前島。優等生はいう事が違うな。ええと、俺に思いつく例と言えば、宇宙戦艦ヤマトのデスラー総統ぐらいか?」
「あはは、そうね。例としては間違ってはいないわ」
 園田先生は一瞬コーヒーを吹きそうになったが、気を取り直して話を続ける。
「日本の歴史でもファシズムの時代はあったわ。特に昭和初期の戦前戦中。軍部が政治を完全にコントロールして、ヒットラーのナチスドイツと手を組んで第二次世界大戦に突き進んだ」
「あの、先生、あたし分からない点があるんですけど」
 前島が段々饒舌になってきた。こいつ、こんな難しい話によくついて行けるな。やっぱり俺とは頭の出来が違う。
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