放課後の視聴覚室は密の味
「また、急いで来たんだろ。
そんなに急がなくても、僕は逃げないよ?」
僕は奈菜の反応を見るようにイタズラに笑う。
奈菜はそれに小さくコクンと頷いて
「分かってるけど…でも……」
言葉を濁すように語尾を弱めた。
「でも…なに?」
僕はその語末に続くであろう言葉を知っているが、敢えて尋ねる。
奈菜の声でその理由を聴きたいから……
「早く先生に会いたかったんだもん」
奈菜は恥ずかしそうにボソッと言うと、耳をピンクに染めた。
…やっぱり……言動まで僕の思った通り。
それでも、僕はそれを目の当たりにすれば
その一瞬の奈菜が
愛おしくて
可愛くてたまらない。
だから、思わず回している腕にも力がこもる。
しかし、一つだけ……