放課後の視聴覚室は密の味
それから
奈菜が突然、僕の膝を立つと、
側に置いていた自分の鞄から、缶コーヒーとミルクティーを取り出して、
僕にコーヒーを差し出し、それを受け取ると、奈菜は僕の横にある椅子に腰を下ろした。
この部屋に互いのプルトップを開ける音が響く。
僕が缶に口をつけると、それを確認してから、奈菜も缶を両手で包んで、ミルクティーを口に含む。
そして、幸せそうに微笑んだ。
「そう言えばさぁ、自習時間の奈菜、やけに楽しそうに山下と話していたよな?」
僕はさり気なく聞いて、反応を伺うように奈菜を見る。
さっきの自習時間、ずっと楽しそうに話をしていた奈菜と山下。
それだけならいいのだが、奈菜に対して、山下はやけに馴れ馴れしい態度。
見なければいいものの、どうしても二人の様子が気になって、僕の視線はそこへ向かう。
絶対にアイツは奈菜を狙ってる。
男の感で分かるんだ。
とはいえ、僕がそこに割って入るワケにもいかず……
只でさえ、奈菜が他の男と話しているのを見るとムカつくのに、
そこで何も出来ないことが、
僕のイライラを更に募らせた。