放課後の視聴覚室は密の味
奈菜は“そう?"と小首を傾げて
「だって山下君、隣の席から、やたらと話しかけてくるんだもん」
と、あっけらかんと答える。
「そうか…それにしても親しすぎないか?」
眉間に皺を寄せ、奈菜の答えに不服な態度を見せた僕に、
奈菜は少し考えるような素振りを見せて、
「あれ?もしかして秀、山下君に妬いてるの?」
と、目を輝かせる。
「そんなワケないだろ?なんで僕が高校生の男相手に妬かなきゃいけないんだよ」
大人な余裕を見せるように答えた僕だけど、奈菜から背けた顔が熱くなるのを感じる。
そんな僕の態度に、見る見る顔全体を綻びさせていく奈菜が、僕の横目に入った。
そして、奈菜はニンマリとして
“図星でしょ?"と、僕に追い討ちをかける。
嬉しそうな奈菜の態度が
なんか悔しい……
けど、ちょっと違うんだ。
ヤキモチ…嫉妬……
僕が抱いた気持ちは確かにそうかもしれない。
でも、それだけじゃない。
ただ…ただ不安なんだ。
奈菜と歳の近いヤツに、奈菜を持っていかれそうで…怖いんだ。