夏色ファントム
何気なく右を見ると、小さな祠があった。
周りの木々に注連縄(しめなわ)が巻いてあり、そこだけ異様な空気を放っていた。
恐る恐る近付く。
その時、後ろから何かがカサッと動くような音がした。
「誰だっ!?」
勢いよく振り向く俺。
そこには俺と同じくらいの年であろう女の子が立っていた。
髪はおかっぱ、落ち着いた色の浴衣を着ている。
今の時代と不似合いな恰好。
俺は眼鏡を押し上げた。
「誰だ?」
「誰でもいいでしょ」
「初対面の人に、その言い種かよ」
「お互い様だよ」
淡々と喋る彼女を見ていると、不思議な気持ちになってくる。