夏色ファントム

首をかしげるオレに向かって、彼女は俺が持っている籠を指差した。

「……山菜」

そう言って、近くの茂みを指す。

「おぉー!」

「……帰り道はあっち」

感動している俺を他所に、彼女は道なき道を指差した。
少し不安になる。

「……帰れんの?」

「当たり前じゃん」

「本当に?」

「アナタのじーちゃん家までの近道」

「何で知ってるんだよ?」

「知ってちゃ悪い?」

「いや、別に」

首を横に振り、彼女をまじまじと見つめる。
そんな俺を気に留めようとせず、彼女は山の奥へと行ってしまった。

「何なんだ……アイツ」

眉を寄せ、俺は彼女の背中を見送った。

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