ルチア―願いを叶える者


「…ルチアの力よ…」


祈るように手を合わせ、目をつぶる。


この時のはざまにいる私の仲間の為に。


国を思い、たった一人で戦っていたメル様の為に。


「狂った時を元に戻して!!」


―パアアアアァァッ


私の体から光が瞬き、暗闇を光で照らす。


―グニャン


時空が歪んだ。


「花音!!!」


アルが私の手を掴んだ。


「ア…ル……」


あれ………?
私、時をさ迷う前もこの手に…


………そうか…。
あの時私の手を掴んでくれたのはアルだったんだ…



なのに私……
アルの話も聞こうとしないで、子供みたいにそっけなくして…


アルの事だから、いつもの毒舌が炸裂しただけだよ。


私、ちゃんと謝らなきゃ…



「ア…ル……め…」


あぁ……
体に力が入らない…


意識が遠ざかる。



「ご………」


最後まで言えずに、私は意識を手放した。











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