ルチア―願いを叶える者


――――――――――
―――――――
――――


「本当、なんとお礼を言ったらいいか…」


メル姫が深々と頭を下げる。


「いや、他人事ではないですから」


シェスはうやうやしく頭を下げた。


「本当は、直接お礼が言えたら良かったのだけれど…」


メル姫は俺の腕の中で眠る花音の頬に触れた。


「我が国はまだ、国として機能していません。医者も今どこにいるのかも分からない次第です。隣国のエルデならここからそう遠くありません」

「馬の手配まで、ありがとうございます。花音にもそうお伝え下さい」



そんな二人の会話をただ黙って聞いていた。


俺は…
花音に触れる資格があるのか…?


俺は自分勝手な嫉妬で花音を傷つけた。


なのに守られて…


ルカ、ルカと呼ぶ花音の声が煩わしかった。


姿もない誰かを、大切だという花音に腹が立って…


「どっちが子供かわかりませんね…」


小さな声で呟いた。


花音……
目が覚めた時、あなたは私の事を許してくれるでしょうか…











< 169 / 403 >

この作品をシェア

pagetop