ルチア―願いを叶える者
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「本当、なんとお礼を言ったらいいか…」
メル姫が深々と頭を下げる。
「いや、他人事ではないですから」
シェスはうやうやしく頭を下げた。
「本当は、直接お礼が言えたら良かったのだけれど…」
メル姫は俺の腕の中で眠る花音の頬に触れた。
「我が国はまだ、国として機能していません。医者も今どこにいるのかも分からない次第です。隣国のエルデならここからそう遠くありません」
「馬の手配まで、ありがとうございます。花音にもそうお伝え下さい」
そんな二人の会話をただ黙って聞いていた。
俺は…
花音に触れる資格があるのか…?
俺は自分勝手な嫉妬で花音を傷つけた。
なのに守られて…
ルカ、ルカと呼ぶ花音の声が煩わしかった。
姿もない誰かを、大切だという花音に腹が立って…
「どっちが子供かわかりませんね…」
小さな声で呟いた。
花音……
目が覚めた時、あなたは私の事を許してくれるでしょうか…