ルチア―願いを叶える者


『かみさま、どっかいたい?』

『ふふっ…本当に美しくて優しい心の持ち主…』


その人が優しく抱きしめてくれた。


温かい、懐かしい…
同時に、何故か悲しかった。


『どうか、あなたはその心を悪魔に売ってはだめよ…』

『?』


『同じ…あなたは兄さんと同じ魂を持っている…』


兄さんと…同じ魂…?


―ドクンッ


なんだろう…
胸がざわざわする…


『私はあなたの魂が好きよ…』


その人は泣いていたような気がする。


胸が苦しい…


『私の心が、消えてしまっても…』


もう会えない…
そんな気がした。


『最後にあなたを愛せて良かった。たとえ、夢であったとしても……』


行かないで…
もっと傍にいて…


ずっともらえなかった…
誰にももらえなかった、愛情をくれた人…


母親のような人……


『さよなら…私の大切な人…。どうか、私の事は忘れて…幸せに…』


―パアアアアッ


光が瞬く。
そしてこの瞬間、私は何か大切なモノを失ってしまった。



そう、大切なその人との愛しい時間の記憶を…









< 173 / 403 >

この作品をシェア

pagetop