ルチア―願いを叶える者


「…助けられなかったか…」


シオンの呟きにロイは頷く。


助けられなかったって…
まさか…
さっきの悲鳴……


「もう喰われてやがった」

「くそっ…魔物か…」


魔物………
私、何してたんだろう…


早く願って救うべきだった。正体がばれたっていい。


救われる命があるなら…
この命を差し出す価値がある。


『させないわよ』

「!!!!」


―キィィン…


耳鳴り!!!
ルリ……何をするの!?


「おい、耳押さえてどうした!?」


ロイが私の肩に手を置いた瞬間…


―グワンッ


空間が歪む。


『魔を司りし古の支配者達よ』


「いけない!!!魔物が来る!!」

「分かるのか!?」


ルリ…やめて……
これ以上この人達を苦しめないで!!!


「ルチアの力よ……」


私は両手を組む。


「ルチアって…お前…」


ロイの声が聞こえる。
でも今は気にしない。


ばれたっていい。
今はなんとしても……


私の体が光り出す。


集中しなくちゃ……
祈るんだ…この村の平穏を…


『…穢れしルチアの力よ、無垢なるルチアを穢せ!!』

―バチバチッ


「うっ…あぁっ…」


胸が…痛いっ!!!


「しっかりしろ!!花音!!」


何…これっ……
胸元をみれば黒い薔薇の刻印が刻まれている。


「…うぅっ…」

『ふふっ…せいぜい無力な自分を呪いなさい』


何…を………











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