ルチア―願いを叶える者
「いつまで…目をつぶってるつもりですか…?」
…えっ……?
「花音は怖がりだからな。大丈夫だ、お前の心配するような事は起こってないぞ」
嘘……
この声………
「あんたら…誰……?」
いるはずのない人達の声…
そんな…まさか………
ゆっくりと目を開ける。
そこには……
「嘘…嘘っ……」
涙が流れた。
会いたくて会いたくて仕方なかった人達…
「アル!!シェス!!」
二人がいた。
足元には魔物が倒れている。
「…邪魔したのは…ルカね」
心底恨めしそうにルリは爪を噛む。
『花音…』
「ルカ…ありがとう…」
『間に合って良かった』
ルカ…
やっぱりルカは私の願いを叶えてくれる。
本当にありがとう……
「ま、いいわ。人間と獣がいた所で何にもならないし」
ルリは興味なさそうに呟く。
「さて、花音?」
ルリはゆっくりとこちらに視線を向ける。
「力は使えないわよ?使おうとすれば刻印があなたの体を苦しめる。とてつもない痛みをもたらすの」
「そん…な……」
さっき、力を使おうとした時の痛みを思い出す。
死んでしまうかと思うくらいに壮絶な痛み…
一体どうしたら……
「刻印はどうしたら消えるんだ?」
シェスの問いにルリは怪訝そうな顔をする。
「私が教えるとでも?」
「なら力ずくで解決するまでです」
アルは剣先をルリへと向けた。
「力ずく?…ふっ…あははははっ!!馬鹿じゃないの!?脆弱な人間ごときが、私を!?馬鹿じゃないの?」
ひとしきり笑った後、ルリは妖艶に微笑む。
「そうねぇ…どうせ何も出来ないんだし、教えてあげるわ」
近くの魔物の体を撫でながら、ルリは口を開く。
「私の胸元にあるその子と同じ刻印を傷付ける事…。はたして出来るかしら」
ルリは地面へと降りる。
「余裕だな…お前」
ロイは短剣を構えた。
「行きますよ…はぁっ!!」
―シュッ
アルが剣を振るう。
「無駄よ」
―パキンッ
目に見えない壁がアルの攻撃を防ぐ。
「チッ…」
―シュッ、シュッ
ロイの短剣がルリの背後を狙って投げられる。
「はぁ…つまらないわ」
―グワンッ
投げられた短剣の動きが止まり、剣先がロイに向く。
「なっ…」
「お返しするわ」
―シュッ、シュッ
今度は短剣がロイを襲う。
―ガキーンッ!!!
「大丈夫か!?」
それをシェスが剣で弾き返した。
「…そんなんで私を傷付けるなんて出来るの?」
ルリはおかしそうに笑う。