ルチア―願いを叶える者
「花音…そこまで言われちゃあな。……聞いてくれるか?」
フッと真剣な顔になったシェスに無意識に唾を飲んだ。
真剣な顔……
シェスやアルは何を抱えてるの……?
「ここ、ルアーネ国は俺の父上が治める水に富んだ国だ」
「他国からは水の都、とさえ謳われています」
アルが付け加えるように言う。
水の都………
確かにここに来るまでに沢山の水路を見たっけ…。
「だが、最近水が枯渇し始めた。今まで、溢れんばかりの水の恵みが急速に途絶えつつある。それは、この国の地位、民の生活、命までもが危険に脅かされるという事だ」
「そんな…一体何が…」
今までは普通に水が溢れていたのに…
「だから、水の源、ルアーネ国の北に位置するナスタ山脈を調査しに行った」
「あなたを見つけたのも、調査の途中だったんですよ」
そうだったんだ…
逆に、調査がなかったら私は……
誰にも見つけてもらえなかった。
感謝したいような、申し訳ないような……
「原因は何だったの?」
「………ナスタ山脈の水源が数ヵ所枯渇していた。だけど、自然にじゃない。雨も降るこの地で、水が跡形もなく消えるなんてありえない」
「それって…誰かが水を消したって事?」
跡形もなく…
そんな魔法みたいな…
あ……
私の願いを叶えるルチアの力も、魔法みたいなものだった。
「どうやったかは分からないが、それは調査しだいだな」
「あ…でも、ルチアなんているくらいだから、魔法を使ったのかも……なんて…」
言ってみたものの、なんて突拍子がないんだろう…
絶対馬鹿にされ……
「まぁそうだな」
「えぇぇっ!」
「お前が言ったのになんで驚く」
「いや…馬鹿にされるかなって……」
魔法とか魔法とか魔法とか!
「たしかにあなたには名前だけじゃなくて頭にも花が咲いているようですが…」
「ムッ!!!」
「ありえなくはないですよ」
「えっ…」
「もしかしたら、あなたのように不思議な力を使える人がいるという可能性の話です」
否定されると思ったのに…
頭ごなしにじゃなくて、ちゃんと私の考えを聞いてくれたんだ…
もしかしたらいい人なのかも…
「魔法…か……」
シェスは思い詰めたように呟く。